草を刈る娘

吉永小百合 -私のベスト20- DVDマガジン 2013年 4/1号 [分冊百科]

【映画情報】

題名:草を刈る娘(くさをかるむすめ)
リメイク:1953年の映画『思春の泉』(新東宝)のリメイク、本作は原作の2度目の映画化作品
ジャンル:青春恋愛ドラマ
監督:西河克己
出演:吉永小百合、浜田光夫、望月優子
製作年:1961年
上映時間:86分
配給:日活
製作国:日本
言語:日本語

【評価】

おすすめ度:70点(100点満点中)

【あらすじ・ストーリー・物語】

 18歳になるモヨ子(吉永小百合)は初めて草刈り隊の参加して、そで子婆さん(望月優子)に連れられて草原にやって来る。東北地方の津軽平野のある地域では毎年秋になると草刈り隊を組んで2週間ほど馬草を刈りに行くのが行事になっていた。同じ頃、近くの草原にもため子婆さん(清川虹子)が率いる富田集落の草刈り隊がやって来ていた。そして、偶然モヨ子は、ため子婆さんの草刈り隊について来ていた時造(浜田光夫)と出会う。

 そで子婆さんとため子婆さんは、モヨ子と時造を結婚させようと二人を同じ場所で草刈りをするように取りはかる。二人は親しくなるが、時造がモヨ子を無理矢理抱きしめたことで二人は気まずい関係になってしまう。

 そんな時、モヨ子と幼馴染みの一郎(平田大三郎)が東京から帰って来る。一郎はモヨ子が好きだと告白したため、モヨ子をめぐって時造と一郎は喧嘩になってしまい、時造は一郎に負けてしまう。

 ところが、その後、草刈り隊に来ていた村娘の死体が見つかる。そで子婆さんは若い娘の死体を見て「亭主があればこんなことにならねえのによ」とつぶやく。未婚の娘の死にショックを受けたモヨ子はその場から逃げるように離れる。後を追って来た時蔵へモヨ子はお前の嫁にしてくれと頼む。二人はお互いに結婚の約束を交わす。

【レビュー・感想・ネタバレ】

 この映画を見て、草刈り隊のなるものがあったことを初めて知った。珍しいものを見れたという感慨がわいた。映像も総天然色で草原の風景がきれいだ。どこまで当時の農家や農民を反映しているかはわからないが、何となく当時の雰囲気らしきものを感じられた。現代では農家の農民の恋愛映画というのは珍しいかもしれない。

 明るい雰囲気の映画だったのに、後半で村娘の死という事件が起こったのは意外であった。映画の中で語られた台詞からそで子婆さんは、若い娘が結婚もせずいたことを事件の原因と考えたようである。つまり、男女関係のもつれと考えたのである。しかし、真相はその娘がお金を貯めていたことが原因であった。物売りの小父さん(佐野浅夫)が娘の持っていた貯金通帳を盗むために殺したのである。

【キャスト・配役・出演者】

モヨ子(吉永小百合)
時造(浜田光夫)
そで子婆さん(望月優子)
ため子婆さん(清川虹子)
金作(大坂志郎)
ちえ(菅井きん)
佐五治(山田吾一)
ヤス子(安田千永子)
一郎(平田大三郎)
加代(三戸部スエ)
庄吉(高島稔)
光夫(小沢直好)
ユリノ(葵真木子)
カズミ(金子克予)
トシ子(千代侑子)
小林巡査(益田喜頓)
物売りの小父さん(佐野浅夫)
善太(近藤宏)
はま子(山岡久乃)

【スタッフ】

監督:西河克己
原作:石坂洋次郎『草を刈る娘』
脚色:三木克巳
企画:坂上静翁
美術:佐谷晃能
音楽:池田正義
録音:中村敏夫
照明:三尾三郎
スチール:寺本正一
撮影:岩佐一泉
編集:鈴木晄

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タグ:草を刈る娘

沓掛時次郎(1961年)

沓掛時次郎 [DVD]

【映画情報】

題名:沓掛時次郎(くつかけときじろう)
ジャンル:股旅物時代劇
監督:池広一夫
出演者:市川雷蔵、新珠三千代、杉村春子
公開:1961年6月14日
上映時間:86分
製作・配給:大映
製作国:日本
言語:日本語

【評価】

おすすめ度:75点(100点満点中)

【あらすじ】

 信州沓掛生まれの博徒である沓掛時次郎(市川雷蔵)は一宿一飯の恩義から博徒の六ツ田の三蔵(島田竜三)に一太刀だけ浴びせ逃がすが、溜田の助五郎(須賀不二男)一家の待ち伏せにあい三蔵は殺されていまう。助五郎が三蔵を殺したのは女房のおきぬ(新珠三千代)を自分のものしようという横恋慕だったことを知った沓掛時次郎は、助五郎一家からおきぬと倅の太郎吉(青木しげる)を守るため二人を連れて逃げる。三人は熊谷宿まで逃げて旅籠の桔梗屋で宿泊するが、おきぬは病にかかってしまう。桔梗屋の女将であるおろく(杉村春子)の紹介で医師の玄庵(志水元)に見立ててもらうと、おきぬは病の他に身ごもっていることが分かる。

 沓掛時次郎は、おきぬと太郎吉を足利在あるおきぬの実家に引き取ってもらおうと訪ねるが、父親の源右衛門(荒木忍)にやくざと一緒になったときに娘は勘当したという理由で断られてしまう。沓掛時次郎はおきぬと太郎吉の面倒をみるため足を洗って、門前に立ち歌を歌って報酬をもらう門付けを始める。助五郎のふれ書きで沓掛時次郎の一件を知った聖天の権威(稲葉義男)は太郎吉をさらおうとするが、沓掛時次郎が守る。そこへ、八丁畷の徳兵衛(志村喬)が通りかかり喧嘩の仲裁を買って出る。そのことがきっかけで、聖天の権威は八丁畷の徳兵衛へ喧嘩状を送りつける。頭数が少なく喧嘩に不利な八丁畷の徳兵衛は沓掛時次郎の腕を見込んで助っ人代に10両を支払うことを申し出る。沓掛時次郎はおきぬの出産のため10両を受け取って喧嘩の助っ人を買って出る。

 権威一家と徳兵衛一家の喧嘩は沓掛時次郎が聖天の権威を斬り殺すという活躍もあって徳兵衛一家が勝つ。喧嘩が終わって沓掛時次郎は直ぐさま桔梗屋へ戻るが、既に六ツ田の三蔵の一家が桔梗屋へ押し込んでいた。自害をしようとしたおきぬは腹部に当身を受けて悶絶死してしまう。太郎吉は人質に取られていたため沓掛時次郎は降参せざるを得なかったが、危機一髪のところを反撃し、激しい乱闘になる。沓掛時次郎はあちらこちらへ逃げながら三蔵の者を倒していき、最後は六ツ田の三蔵を斬り殺す。

 沓掛時次郎は残された太郎吉を連れて足利在へ行き、おきぬの父親の源右衛門と母親のおとわ(滝花久子)を預ける。沓掛時次郎は太郎吉に「やくざ稼業から足を洗ったらきっとまた逢いに来る」と言い残し去って行った。

【レビュー・感想・ネタバレ】

 この長谷川伸の戯曲『沓掛時次郎』は、過去に8回も映画化されており、テレビドラマ化も5回もされている股旅物としてお馴染みの作品である。私は映画では1966年の加藤泰監督・初代中村錦之助主演の『沓掛時次郎 遊侠一匹』を既に見ている。テレビはどのドラマを見たかどうもはっきりしない。

 今回の市川雷蔵主演の『沓掛時次郎』は過去の作品の中でもよく出来ているのではないかと思われた。

 本作の沓掛時次郎は六ツ田の三蔵に女房と倅がいることを知って斬り殺さずに一太刀だけ浴びせるという義理と人情の狭間で粋な計らいをするあたり、沓掛時次郎の人柄が偲ばれる。沓掛時次郎は残されたおきぬと太郎吉に並の人にはできない世話をする伏線にもなっている。ここまで人情を貫き通す人物はほとんどいないだろうからこそ美しい話にもなっていて人の心を打つのであろう。

 この映画では市川雷蔵の多人数を相手にした立ち回りのアクションも楽しめる。

 沓掛時次郎で一番不思議な謎は、ここまでの人格を持つ沓掛時次郎がなぜ博徒になんかなったのかということである。

【キャスト】

沓掛時次郎(市川雷蔵)
おきぬ(新珠三千代)
おろく(杉村春子)
六ツ田の三蔵(島田竜三)
太郎吉(青木しげる)
聖天の権威(稲葉義男)
八丁畷徳兵衛(志村喬)
赤田三十郎(千葉敏郎)
溜田の助五郎(須賀不二男)
おとわ(滝花久子)
源右衛門(荒木忍)
玄庵(志水元)
大野木の百助(村上不二夫)
苫屋の半太郎(寺島貢)
磯田の鎌吉(木村玄)
政吉(高倉一郎)

【スタッフ】

監督:池広一夫
原作:長谷川伸の戯曲『沓掛時次郎』
脚本:宇野正男、松村正温
企画:財前定生
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
照明:中岡源権
録音:近藤正一
音楽:斎藤一郎
助監督:宮島八蔵
スチール:西地正満

【楽曲】

主題歌:「沓掛時次郎」[作詞:佐伯孝夫、作曲:吉田正、歌:橋幸夫](ビクターレコード)

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