【映画情報】
題名:学校(がっこう)
シリーズ:「学校」シリーズ第1作目(全4作、1993年〜2000年)
ジャンル:学校ドラマ
監督:山田洋次
出演者:西田敏行、竹下景子、萩原聖人
製作年:1993年
上映時間:128分
配給:松竹
製作国:日本
言語:日本語
【評価】
おすすめ度:84点(100点満点中)
【あらすじ・ストーリー・物語】
東京の下町の一角にある夜間中学校に勤務する教師の黒井(西田敏行)はある日登校すると校長(すまけい)に呼び出され昼間の中学校への異動を薦められる。黒井は、夜間中学校の場合、卒業生が学校へやって来たとき顔を知っている古狸の先生がいる必要があると主張して異動の話を断る。
夜間中学校では卒業式を間近に控え、黒井は自分が担任する生徒たちに卒業記念文集のための作文の授業を行う。教室では生徒のひとりであるイノさん(田中邦衛)の席が空席になっていた。イノさんは病気のため田舎へ帰り療養しているのだった。黒井は、年齢も、職業も、学校へ来た事情もそれぞれ違う生徒たちが原稿用紙に向かう姿を見ながら彼らとの思い出を振り返っていく。
黒井が担任する生徒たちには次の7人がいた。孫もいる年になって入学してきた肉屋を経営する在日コリアン(韓国人)の中年女性のオモニ(新屋英子)。学校に入れず近くでうずくまっていたのを黒井が声を掛けて入学した髪の毛を染めたツッパリ不良少女のみどり(裕木奈江)。自閉症で中学校を不登校になった登校拒否児のえり子(中江有里)。昼間は清掃会社で肉体労働を働く少年のカズ(萩原聖人)。父は中国人、母は日本人で五年前に中国から移住してきたけれど日本の社会になかなか馴染めない中国人青年の張(翁華栄)。脳性麻痺で言葉の不自由な修(神戸浩)。夜間中学校へ入る中年まで文字が読めなかったイノさん。
そんなある日、黒井はイノさんの叔母さん(園佳也子)から電話がありイノさんが死んだという知らせを受ける。黒井は田島先生(竹下景子)の授業を自分の授業と交代して、イノさんの思い出を語るホームルームの時間にする。そこでクラスの同級生たちと黒井がイノさんの思い出を語り始める。イノさんの生い立ち、長年の肉体労働で身体を酷使していたこと、医師に夜間中学校へ連れて来てもらったこと、競馬が好きだったこと、田島先生が好きだったこと、失恋後に体調を崩して学校へ連れて行ってくれた医師の病院へ行くと深刻な病気だと分かったこと、実母は既に交通事故で亡くなっていたこと、病院に入院中故郷の山形へ帰りたがるようになり叔母さんのところへ身を寄せたことなど。
ホームルームでイノさんの不幸な人生を語り合ううち幸せ(幸福)って何だろという疑問にぶち当たる。幸せは自分が幸せだと思ったら幸せなんだという意見に対して、幸せだと錯覚していても幸せなのかという反対意見も出る。みどりは黒井先生が声を掛けてくれたことで夜間学校へ入れたとき幸せだと思ったと言う。しばらく前から教室の外では雪が降り始めていた。
ホームルームが終わり、生徒たちは教室を出て学校を後にする。黒井が教室を出ると、えり子が待っていて高校へ進学し大学を卒業して自分も黒井先生のようにこの夜間学校の先生になると決意を語る。黒井が学校の校舎を出ると、田島先生も出て来て、雪が降る中を黒井と田島先生が傘を差して学校を後にする。
【レビュー・感想・ネタバレ】
昔、若い頃にこの映画を見たとき何が良いのかよく分からずじまいで終わってしまっていた。
私も年齢を重ねて少しはこの映画の良さが分かるようになったようである。
私はこの映画を見て初めて夜間中学校なるものが存在することを知った。何らかの事情で中学校を卒業できなかった人のための学校なのだけれども、この映画を見ることでその存在の必要性がひしひしと伝わって来た。私は当たり前のように学校を出たが、もし学校を出ていなかったとすれば何とか学校へ行って勉強をしたいと切実に思っていたかもしれないと思う。それほど学校に入って出るということが人生において大事なことなんだと再認識させられた。もちろん、学校なんか行かなくたって構わない後悔しないという人もいるだろう。自分の意思でそう決めて学校へ行かなかったのであればその人にとって学校は重要ではないだろう。しかし、学校へ行きたかったのに行かれなかった人にとって学校は重要な問題になり得る。この映画に登場して来る夜間中学校は学校らしい学校であるがゆえにその存在価値を私たちに教えてくる。学校へ行けなかった人こそ学校の価値を知っている。私は学校の価値をよく考えもせず当たり前のように入学して卒業したということをこの映画で知らされた。
この映画は松崎運之助[まつざきみちのすけ]氏の『青春 夜間中学界隈』(教育史料出版会、1985年)をモチーフにして製作されている。そのため、同書の中で登場してくる井上という生徒がイノさん(猪田幸男)のモデルとなっている。つまり、イノさんのモデルは実在の人物なのである。それだけではなく、映画で描かれているイノさんの話はほとんど事実と同じである。そのことを知ると、この映画の重みも増してくるのではないだろうか。
本作は、松竹創業百周年記念作品であり、日本テレビ放送網開局四十年記念作品でもある。
【キャスト・配役・出演者】
黒井先生(西田敏行)
田島先生(竹下景子)
カズ(萩原聖人)
えり子(中江有里)
オモニ(新屋英子)
張[チャン](翁華栄)
修(神戸浩)
みどり(裕木奈江)
八百屋の親父(渥美清[特別出演])
河合茂(大江千里)
土屋(笹野高史)
えり子の父(大和田伸也)
えり子の母(浅利香津代)
イノさんの叔母さん(園佳也子)
リネン工場の社長(坂上二郎)
校長(すまけい)
自動車解体工場の社長(小倉久寛)
イノさん(田中邦衛)
【スタッフ】
監督:山田洋次
助監督:阿部勉
製作:中川滋弘
プロデューサー:深澤宏
脚本:山田洋次・朝間義隆
原案:広沢栄
撮影:高羽哲夫・長沼六男
音楽:冨田勲
美術:出川三男・横山豊
編集:石井巌
録音:鈴木功
スクリプター:広沢栄
スチール:金田正
照明:熊谷秀夫
製作:松竹・日本テレビ放送網・住友商事
Amazonで「学校」を探す
楽天市場で「学校」を探す