伊賀の水月(1958年)


【映画情報】

題名:伊賀の水月(いがのすいげつ、英題:Ambush at Iga Pass)
ジャンル:時代劇
監督:渡辺邦男
出演者:長谷川一夫、市川雷蔵、近藤美恵子、中村玉緒
製作年:1958年
上映時間: 99分
配給:大映
製作国:日本
言語:日本語

【評価】

おすすめ度:64点(100点満点中)

【あらすじ・ストーリー・物語】

 江戸で柳生流荒木道場を開いた荒木又右衛門は(長谷川一夫)は、旗本六方組にからまれれてた池田藩士渡辺靭負(小川虎之助)の娘みねを(近藤美恵子)を救う。公儀御指南役の柳生流の看板を掲げたことで柳生流柳生道場へ呼び出された荒木又右衛門は柳生但馬守(黒川弥太郎)に柳生十兵衛から伝授された2つの奥義を伝授する。柳生但馬守は荒木又右衛門を見込んで彼を大和郡山の本多家の御指南役として本多大内記(市川雷蔵)へ推挙する。池田藩からも渡辺靭負が使者となって池田藩の御指南役にと荒木道場へ訪問するが、既に本多家への仕官が決まった後のことだった。渡辺靭負は荒木又右衛門の仕官を諦めるが、娘のみねを嫁にもらってほしいと懇願する。荒木又右衛門もみねとの縁談を承諾し、みねとともに本多家の知行地である大和郡山へ赴く。

 2年後、参勤交代のため荒木又右衛門も江戸へ行くことになる。一方江戸では河合又五郎(田崎潤)は叱責されたことで渡辺靭負を斬り殺してしまう。河合又五郎は旗本六方組首領の阿部四郎五郎(河津清三郎)の屋敷へ逃げ込む。

騒動は池田藩と旗本との対立までに発展してしまう。荒木又右衛門は義弟の渡辺数馬(鶴見丈二)とみねから敵討の助太刀を頼まれるが、本多家の家臣である身分では本多家に迷惑が及ぶおそれがあり断らざるを得なかった。荒木又右衛門は主君の本多大内記に何度か掛け合いやっと本多家を辞する許しを得る。

 一連の騒動の収拾に困った幕府は、池田藩には国替え、旗本には蟄居という喧嘩両成敗の処罰を与え、河合又五郎本人には江戸追放を命じる。九州へ下ることになった河合又五郎を無事に行かせるため旗本六方組は腕の立つ浪人36人を募り、道中彼を守護させることにする。晴れて浪人となった荒木又右衛門は渡辺数馬の助太刀をすることを申し出て、若党武右衛門(林成年)と若党孫右衛門(水原浩一)の4人で仇討ちに向かう。

【レビュー・感想・ネタバレ】

 本作は日本三大仇討ちの一つである荒木又右衛門の鍵屋の辻での敵討(鍵屋の辻の決闘、伊賀越の仇討ち、伊賀越の敵討)を描いている。寛永11年11月7日(1634年12月26日)に荒木又右衛門と渡辺数馬と数馬の弟の仇である河合又五郎を伊賀国上野の鍵屋の辻で討ったことからそう呼ばれるようになった。因みに、日本の三大敵討のうち残り2つは、「赤穂義士の仇討(赤穂浪士の討ち入り、忠臣蔵)」と「曾我兄弟の仇討ち(曽我兄弟の富士の夜襲)」である。

 この仇討ち事件を扱った作品に1953年の映画『伊賀の水月(改題:剣雲三十六騎)』(監督:池田富保、主演:阪東妻三郎)がある。

 本作で一番印象的だったのは長谷川一夫さんの容貌である。長谷川一夫さんといえば細面のお顔という記憶しかなかった。ところが、本作に出演されている長谷川一夫さんのお顔は横に丸く膨れて太っておられる。こんな時期もあったのだなあと知ることができた。

 市川雷蔵さんの殿様姿はハンサムで若き英明な大名といった感じである。

 映画の内容はまあまあの出来で、普通の時代劇として楽しめる。

 河合又五郎等一党を待つ間に荒木又右衛門はまだ若く剣の未熟な渡辺数馬に稽古をつけて上達してから仇討ちに臨んでいる。本作では仇討ち事件のあった当日は寛永十八年正月十八日払暁になっているようである。荒木又右衛門は友とも呼べる剣豪の河合甚左衛門(見明凡太朗)をはじめ河合又五郎の助っ人の付き人全員を斬り倒す。二人の若党も必死に奮闘する。しかし、武右衛門は敵手に斬られて落命する。最後の結末は、渡辺数馬が河合又五郎を刺し殺し見事本懐を遂げる。

【キャスト・配役・出演者】

荒木又右衛門(長谷川一夫)
本多大内記(市川雷蔵)
若党武右衛門(林成年)
池田忠雄(島田竜三)
渡辺数馬(鶴見丈二)
柳生但馬守(黒川弥太郎)
おりゅう(阿井美千子)
みね(近藤美恵子)
みち(中村玉緒)
ゆき(浦路洋子)
阿部四郎五郎(河津清三郎)
河合又五郎(田崎潤)
星合段四郎(千葉敏郎)
近藤登之助(小堀明男)
旗本我孫子(杉山昌三九)
渡辺靱負(小川虎之助)
柳生家老笹川(原聖四郎)
河合甚左衛門(見明凡太朗)
大久保彦左衛門(二代目中村鴈治郎)
荒尾豊後(荒木忍)
旗本一党(羅門光三郎)
若党孫右衛門(水原浩一)
旗本兼松(寺島貢)
町人仙太(本郷秀雄)
旗本久世(伊達三郎)
池田志摩(葛木香一)
松平伊豆守(香川良介)

【スタッフ】

監督:渡辺邦男
脚本:渡辺邦男
企画:税田武生
製作:酒井箴
撮影:渡辺孝
美術:上里義三
音楽:山田栄一
録音:大谷巌
照明:伊藤貞一
編集:宮田味津三

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タグ:伊賀の水月

インシテミル 7日間のデス・ゲーム

インシテミル 7日間のデス・ゲーム [DVD]

【映画情報】

題名:インシテミル 7日間のデス・ゲーム(いんしてみる なのかかんのです・げーむ)
ジャンル:ミステリー、スリラー、心理サスペンス
監督:中田秀夫
出演者:藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみ
製作会社:「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:2010年10月16日
上映時間:107分
製作国:日本
言語:日本語

【評価】

おすすめ度:70点(100点満点中)

【あらすじ】

 ある人文科学的実験の被験者に参加すると時給11万2000円という高額報酬がもらえるアルバイトに応募した年齢も性別も様々な10人の男女が「暗鬼館」という会場に集められる。実験は実務連絡機構という組織が主催したもので、実験内容は暗鬼館という施設内に7日間隔離された状態で24時間監視付きの共同生活を送るというものだった。

 実験のルールは、ここで起きた事件の犯人を探偵となって推理して全員の多数決で犯人を決めるというものだった。さらに、探偵と犯人はボーナスとして報酬が2倍になるという。そして、もう一つのルールは夜間は部屋から出ないというものだった。各人が自分に割り当てられた部屋に入ると、部屋には大きな箱が置いてあり、箱の中にはアイスピックや斧、毒薬などそれぞれ違う凶器が置いてあった。

 実験開始2日目に拳銃で撃たれた西野宗広(石井正則)の死体が見つかる。大迫雄大(阿部力)は岩井荘助(武田真治)が犯人だと多数決で決めてしまう。多数決で犯人にされた岩井荘助は監獄へ収容される。

 次に、関水美夜(石原さとみ)が渕佐和子(片平なぎさ)をネイルガンで殺す。

 大迫雄大は監獄の天井を落とされて死んでしまう。

 橘若菜(平山あや)は大迫雄大を殺したのは真木雪人(大野拓朗)だと思い、彼を斧で殺し、自分も斧で自害してしまう。

 関水美夜は飲み物に筋弛緩剤を混入させて、結城理久彦(藤原竜也)を殺そうとするが、彼の反撃によって巡回中のガードによって排除されてしまう。関水美夜は渕佐和子が恐くて彼女を殺したのであった。また、関水美夜には病気の娘がおり手術を受けさせるためにお金が必要だったのである。

 最初に死体で見つかった西野宗広は、実は、ガードに殺されただけのことで、自殺しようとしていたのではないかと疑われるようになった。そのため、実務連絡機構が西野宗広を送り込んださくらだったのではないかという疑惑が浮上する。

 実験開始5日目に残ったのは結城理久彦と須和名祥子(綾瀬はるか)と安東吉也(北大路欣也)の3人になっていた。結城理久彦は生き残るためにはお互いが信頼し合うことが大切だと自分の持っている武器の拳銃を差し出す。安東吉也もそれに応じてドライバーを差し出す。このまま実験は終了を迎えるかと思われた7日目の最終日、安東吉也が胸を銃で撃たれた死体が見つかる。そこへ登場したのは監獄にいたはずの岩井荘助だった。

 岩井荘助はナイフで結城理久彦を殺そうとする。結城理久彦は岩井荘助にナイフで足を刺されてしまう。結城理久彦は何とか逃げようとするが、岩井荘助に捕まってしまう。結城理久彦が岩井荘助によってナイフで殺されそうになった寸前に、須和名祥子が岩井荘助の側頭部に拳銃を突きつける。しかし、岩井荘助は反撃し二人を殺そうと拳銃の引き金を引くと、銃は爆発し岩井荘助は死んでしまう。岩井荘助は監獄を抜け出すと、自分を犯人にした大迫雄大を監獄の天井を落として殺したのであった。

 実験開始7日目の最終時間を迎えたとき生き残っていたのは結城理久彦と須和名祥子の二人だけだった。結城理久彦は報酬を受け取ると、須和名祥子を誘う。ところが、須和名祥子は実験をうまく遂行するため実務連絡機構から送り込まれた人間だったということがわかる。岩井荘助を監獄から解放したのは彼女だったのである。そして、実験映像は全世界に流されていて、実務連絡機構はその放映の報酬で実験を運営していたのである。

 生き残りは二人だけだと思われたのであるが、実は安東吉也は偽装して死んだふりをしていたのである。監獄から出た安東吉也は、結城理久彦とともに暗鬼館を去る。その時、結城理久彦は報酬の現金を入れてあるカバンを放り投げてしまう。

【レビュー・感想・ネタバレ】

《2回目》

 2回目は1回目に見たときよりも面白く見ることができた。2回目を見ながら映画の内容をかなり忘れてしまっていることがわかった。覚えていたのは部分的な映像や内容だけだった。

 それでも冷静に落ち着いて見れたおかげで、西野宗広と須和名祥子の言動がおかしいことから実務連絡機構が送り込んだ人間ではないかといことに気がつけた。

 1回目見たときは映画の内容を表面的にしか理解できていなかったのかもしれない。2回目見たときは映画の内容をかなり理解できたので面白さが分かったような気がする。その意味で、この映画は2度見て良かった。

 なお、タイトルのインシテミルの意味は原作の英題「The incite mill」をカタカナにしたものである。その他、インシテミルを文字通りに読んで「INしてみる」とか「淫してみる」という意味に解釈もある。

《1回目》

 原作は、米澤穂信の推理小説『インシテミル』である。本作はホリプロ50周年記念作品として製作されている。

 この映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』は、『ライアーゲーム』や『カイジ 人生逆転ゲーム』といった作品と同系統に属する生き残りを賭けた心理戦サバイバルゲーム映画であるといって良い。したがって、物語としては面白そうな設定になっていると思われる。

 ところが、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』は推理においても、また心理戦においても不十分な内容で頭脳戦といった知的ゲームの面白さが味わえない。原作を読んだ読者は米澤穂信氏の小説『インシテミル』を高く評価していることから映画を見るよりも小説を読んだほうが良いかもしれない。

【キャスト】

結城理久彦(藤原竜也)
須和名祥子(綾瀬はるか)
関水美夜(石原さとみ)
大迫雄大(阿部力)
橘若菜(平山あや)
西野宗広(石井正則)
真木雪人(大野拓朗)
岩井荘助(武田真治)
渕佐和子(片平なぎさ)
安東吉也(北大路欣也)
ガードの声(チョー)
インディアン人形の声(日村勇紀)

【スタッフ】

監督:中田秀夫
原作:米澤穂信
脚本:鈴木智
製作:ウィリアム・アイアトン、堀義貴、宮崎洋
製作総指揮:小岩井宏悦、菅井敦、奥田誠治
撮影:林淳一郎
編集:高橋信之
制作プロダクション:ツインズジャパン
製作:「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」製作委員会(ワーナー・ブラザース映画、ホリプロ、日本テレビ放送網、読売テレビ放送、ツインズジャパン)

【楽曲】

主題歌:May'n「シンジテミル」(flying DOG)

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