【映画情報】
アーティスト(原題:The Artist)
ジャンル:ロマンティック・コメディ・ドラマ、モノクロサイレント
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演者:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ
製作会社:La Petite Reine、ARP Sélection
配給:ワーナー・ブラザーズ、ワインスタイン・カンパニー、ギャガ
公開:2011年5月15日[第64回カンヌ国際映画祭]、2011年10月12日[仏蘭西]、2012年1月20日[米国]、2012年4月7日[日本]
上映時間:100分
製作国:フランス
言語:サイレント、英語(中間字幕)
【評価】
おすすめ度:81点(100満点中)
【あらすじ・ストーリー・物語】
1927年、サイレント映画全盛時代の大スターであるジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作映画の舞台挨拶のあと映画館の前で観客の取り囲まれていたとき、偶然、新人女優のペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)と出会う。映画会社のキノグラフで行われるオーディションを受けに来た彼女は、ジョージ・ヴァレンティンと再会し彼の主演作のエキストラとして採用される。撮影後、ペピー・ミラーはジョージ・ヴァレンティンの楽屋を訪ね、彼から「女優になるのなら、目立つ個性がないと」と、アイライナーで唇の上にほくろを描いてくれる。二人はお互いに惹かれ合うものがあったが何事もなく終わる。ペピー・ミラーは「つけぼくろ」のお陰もあってエキストラから上位の役をもらえるようになり、主演女優に抜擢されるようになる。
1929年、トーキー映画が登場する。ジョージ・ヴァレンティンはサイレント映画こそ芸術だとして、トーキーを否定してサイレントの固執する。映画会社の方針と対立したジョージ・ヴァレンティンは、キノグラフ社の社長(ジョン・グッドマン)と決別し、自ら監督・主演する新作映画を自主製作する。ところが、映画の公開日がペピー・ミラー主演のトーキー映画と重なってしまう。結果は、ジョージ・ヴァレンティンのサイレント映画は観客が少数しか入らず失敗、ペピー・ミラー主演のトーキー映画は観客が溢れて大成功する。ペピー・ミラーはジョージ・ヴァレンティンのことを心配して彼の家を訪れるが、二人は短い言葉を交わしただけで別れる。
1年後、ペピー・ミラーはトーキー映画のスター女優となっていた。ジョージ・ヴァレンティンは株式市場の暴落で財産を失い、妻から屋敷を追い出されてしまう。ジョージ・ヴァレンティンは、狭い部屋でお抱え運転手のクリフトン(ジェームズ・クロムウェル)に世話をしてもらっていたが、給料を1年間も支払っておらず無理矢理彼にクビにして辞めてもらう。生活に困窮したジョージ・ヴァレンティンは家財道具や想い出の品を売り払ってお金に換えるためオークションを行う。そのことを知ったペピー・ミラーは執事にオークションに出品された品々を落札させる。オークション会場から出て来たジョージ・ヴァレンティンの後ろ姿を、離れた道路上に止めてある自動車の中から見つめていたったペピー・ミラーの目には涙が流れていた。
ジョージ・ヴァレンティンは失意のどん底で、酒に溺れ、荒んだ生活を送る日々だった。ある日、彼は酔った勢いで過去の栄光のとらわれた自分と決別し、自分を鼓舞しようと、大切に取っておいた自分が出演した映画のフィルムに部屋の中で火をつける。炎は瞬く間にフィルムだけでなく部屋中に燃え広がり、炎と煙血が充満する部屋でジョージ・ヴァレンティンは1つのフィルムを胸に抱えたまま気を失ってしまう。その場にいた愛犬のジャックが機転を利かせて警官を呼んでくれらたお陰でジョージ・ヴァレンティンは助かる。
新聞の記事で火事のことを知ったペピー・ミラーは、撮影中だったにもかかわらず、病院へ急行する。病院へ駆けつけたペピー・ミラーは、病院の医師から病院へ搬送後もジョージ・ヴァレンティンが抱えて放そうとしなかったうフィルムのことを聞かされる。それは、彼女がエキストラとして出演したジョージの主演映画だった。ペピー・ミラーは、彼を自宅に引き取ることにする。
ペピー・ミラーの屋敷で気がついたジョージ・ヴァレンティンは、彼女の好意を知りそのまま療養させてもらうことにする。屋敷では彼の運転手だったクリフトンが彼女のお抱え運転手になっていた。ある日、ジョージ・ヴァレンティンが屋敷内を歩いていると、ある部屋で彼がオークションに出品した品々があるのを見てしまう。プライドが傷ついたジョージ・ヴァレンティンは、彼女の屋敷を飛び出し、焼け残った自宅の部屋へ行き拳銃自殺を図る。屋敷に帰ったペピー・ミラーは、ジョージがオークションのことを知ってしまって出て行ったことに気がつく。ペピー・ミラーは彼の後を追おうと雲煙種を呼ぶが近くにいなかったため、彼女が自分で慣れない車の運転して彼の自宅へ急行する。
ジョージ・ヴァレンティンが拳銃の引き金を引こうとした瞬間、突然、部屋の外で大きな音がする。彼は部屋の窓から外を覗くと、ペピー・ミラーの運転する車が家の前の道路に植えてある樹に衝突した音だった。ペピー・ミラーは車から下りると一目散にジョージ・ヴァレンティンへのもとへと駆けつける。ペピーはジョージに謝るとともに自分はただ助けたかっただけなのだと本当の気持ちを話す。ペピーの気持ちを知ったジョージは彼女を抱きしめる。
ペピー・ミラーはジョージ・ヴァレンティンに映画の世界へ復帰させる妙案があることを告げる。ペピー・ミラーはキノグラフ社の社長と掛け合い、ペピーはジョージはスタッフの前でペアダンスを披露する。二人のダンスに感動した社長は、ペピーはジョージが出演するミュージカル映画を撮ることになる。
【レビュー・感想・ネタバレ】
この映画の存在を知ったとき、現代においてモノクロでしかもサイレント(無声映画)を製作するということは無謀な挑戦にも思われたが、作品を見終わってなぜモノクロサイレント映画だったのかということが納得できた。モノクロサイレントでなければならなかったのである。私は本作を見るまではモノクロであることは知っていたが、少なくともトーキー(有声映画)なのだろうと思っていた。映画を見始めてサイレント映画だと気がついて驚いた。
映画を見終わって、映画はカラーや音声や音響がなくても素晴らしい作品を作れるのだということを今さらながら再認識させられた。音声がないぶん映像を集中して見てしまうところがあった。モノクロサイレント映画なのにモノクロサイレント映画として新鮮ささえ感じられた。
当初、私は主人公の二人は恋人関係か結婚関係にまでなっていて、その上で男が落ちぶれて女が成功していくという筋書きを予想していたのだけれども、そこまでの関係にはなっていない。むしろ、同じ職場の単なるスター俳優と新人女優という関係だけだったので意外だった。
この映画では、ペピー・ミラーの気持ちを2通りに解釈できる余地がある。1つは愛情であり、もう1つは恩(感謝)である。普通に見れば、ペピー・ミラーのジョージ・ヴァレンティンへの好意と行為は愛だと思える。ところが、作品の中では、ジョージ・ヴァレンティンとペピー・ミラーがキスをしたりするような場面はひとつもない。ましてや、交際するとか結婚するといった話もない。そのため、自分にチャンスを与えてくれたジョージ・ヴァレンティンの恩情に対する感謝も気持ちをペピー・ミラーが忘れずにずっと持ち続けていたと考える余地がある。もちろん、ペピー・ミラーはジョージ・ヴァレンティンのことを好きなのだろうけれど、それが愛か感謝なのかとなると意見の分かれるところである。ペピー・ミラーの気持ちとしては両方あったとみるのが案外正解かもしれない。
どちらにしても、ペピー・ミラーのような女性が現実にいるのだろうかという疑問が出てくる。現実にはいないようでもあり、いるかもしれない。この映画は男と女の物語として単純に見ればいいものを、そんなことまで考えてしまう。
本作は1927年から1932年までのハリウッドを舞台とした映画ということで、私はてっきりアメリカ映画なのだろうと思っていたところ、フランス人監督とフランス人による主演のフランス映画ということでびっくりした。
本作の物語の設定は、男が有名な芸人と銀幕のスター、女がバレリーナと女優という違いがあるものの、1952年のチャールズ・チャップリンの映画『ライムライト』を彷彿とさせる内容になっていた。
【キャスト・配役・出演者】
ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)
ペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)
ジャック[ジョージの愛犬](アギー)
アル・ジマー(ジョン・グッドマン)
クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)
コンスタンス(ミッシー・パイル)
ドリス(ペネロープ・アン・ミラー)
執事(マルコム・マクダウェル)
ノーマ( ビッツィー・トゥロック)
ペピーのメイド(ベス・グラント)
ペピーの最初のお抱え運転手(エド・ローター)
見物人(ジェン・リリー)
賛美する女性(ニーナ・シマーシュコ)
フラッパー・スターレット(ジュエル・シェパード)
競売人(ベイジル・ホフマン)
キャスティング・アシスタント(ベン・カーランド)
質屋(ケン・デイヴィシャン)
【スタッフ】
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
製作:トマ・ラングマン
音楽:ルドヴィック・ブールス
撮影:ギョーム・シフマン
編集:アン=ソフィー・ビオン、ミシェル・アザナヴィシウス
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