【映画情報】
題名:ガラスの中の少女
ジャンル:青春ドラマ
監督:若杉光夫
出演:吉永小百合、浜田光夫、信欣三、轟夕起子
製作年:1960年
上映時間:64分
配給:日活
製作国:日本
言語:日本語
【評価】
おすすめ度:64点(100点満点中)
【あらすじ・ストーリー・物語】
中学生時代同級生だった陽一(浜田光夫)と高校生の晴代(吉永小百合)は偶然駅前で再会し、みつまめ屋に寄って話をする。それから二人は町で会うようになりデートを重ねるが、大学の助教授である父の杉太郎(信欣三)が陽一のことを嫌っていることを知っている晴代はそのことを両親に内緒にする。
実は、晴代は杉太郎の実子ではなく、そのことを晴代も知っている。杉太郎は晴代が実子でないことから本当の父親になろうとして娘を厳しく躾けて育てようとしていた。
陽一の家庭は、父親が失職していて働こうとせず酒ばかり飲んでいて、母親は働きに出ていてた。そのため、陽一は高校へ進学できず町工場で働いていた。
ある日、晴代は学校へ行かず、陽一と半日過ごして帰宅したことから、両親に陽一とのことがバレてしまう。
杉太郎が大学教授に昇進することになり、そのお祝いから酒に酔って帰った杉太郎から手を取り抱き寄せられたことから晴代は父の杉太郎を嫌悪し拒絶するようになる。その夜、母の里子(轟夕起子)から杉太郎が本当の父親でないことを知らされるが、晴代は既に知っていたことを伝える。
両親と喧嘩して家出した陽一は、晴代へ書いた手紙を母親の里子に預けるが、里子はその手紙を燃やしてしまう。
しばらくして、晴代は杉太郎から北海道の大学へ行くこと決めたと伝えられる。引越の最中、靖代は家を飛び出し陽一の家を訪れるが、陽一がいないので工場に行く。靖代の姿を見た陽一は工場を飛び出す。
どこへ行こうかと尋ねる陽一に靖代は遠くへ行きたいと答える。二人は電車に乗って、山間に湖のある静かな所へやって来る。二人はボートに乗って湖の沖へと進めた。靖代は家から持ち出した睡眠薬を取り出し、二人は薬を分け合って飲んだのか、湖水に浮かぶボートには二人の姿は消えていて、波間に晴代の体が揺れていた。
【レビュー・感想・ネタバレ】
映画の内容としては当時の家庭環境がよく演出できていると思う。
この映画で最大の謎は、なぜ晴代は自殺したのかよくわからないという点である。ボートでの陽一とのやりとりで靖代は「この先の自分の人生はどうなるの?」と尋ね、それに対して陽一が靖代は自分以外の誰かと結婚して、子どもが生まれて・・・というふうに答えるとその先はと質問攻めにして、結局最後は死んじゃうんでしょう。だから、今死んでも同じことだと答えている。とするならば、晴代はこれから先の人生を生きていく意味が見出せなくなってしまったいののだろうかと思えるふしがないでもない。
それに対して、陽一のほうは、家庭が貧乏で、母親のために父親と喧嘩したのに、母親が自分ではなく父親の味方をしたことにショックを受け傷つき家を飛び出してしまい、職場の先輩の部屋へ居候をさせてもらっている。職場では機械的な作業の繰り返しで仕事が面白いというわけではない。陽一の立場だっったらやりきれないだろうなとは思えるところはある。
次に、不思議だったのは、晴代が杉太郎から手を取り抱き寄せられて「嫌!」と言った場面である。晴代は父の杉太郎が自分の異性として性的な対象として抱きしめているのではないかと直感的に思って拒絶したのであろうと思われる。しかし、杉太郎がそいう感情を持って晴代を抱き寄せたようには見えないのである。日頃は年頃になった娘を抱き寄せるなどということはできない杉太郎は酔ったいきおいで娘が可愛くて抱き寄せたようにしか見えない。ただ、杉太郎に娘の中に女を見るという感情がなかったとも言い切れない。だから、晴代の直感が正しいのか、それとも晴代の勘違いなのかよく分からない。
陽一と靖代は性交渉を持たず純潔を守ったまま二人で心中をしている。靖代は父の杉太郎の言いつけを守ったかたちで自殺したことになる。それは靖代の父の杉太郎への反抗なのか、それとも娘として素直に父の言いつけを守ったのか?映画を見る限りおそらく後者のように思われる。
【キャスト・配役・出演者】
靖代(吉永小百合)
杉太郎[靖代の父](信欣三)
里子[靖代の母](轟夕起子)
陽一(浜田光夫)
儀助[陽一の父](大森義夫)
ます[陽一の母](小夜福子)
中村(草薙幸二郎)
松三(稲垣隆史)
社長(佐野浅夫)
春江(南風洋子)
【スタッフ】
監督:若杉光夫
脚色:青山民雄
原作:有馬頼義
企画:大塚和
撮影:井上莞
美術:岡田戸夢
音楽:木下忠司
録音:丸山国衛
照明:内藤安三郎
編集:青山一郎
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