【映画情報】
題名:初春狸御殿(はつはる たぬきごてん、英題:Enchanted Princess)
ジャンル:オペレッタ喜劇(ミュージカル映画)
監督:木村恵吾
出演:若尾文子、市川雷蔵
公開:1959年(昭和34年)12月27日
配給:大映
製作国:日本
【評価】
おすすめ度:78点(100点満点中)
【あらすじ】
狸の国のカチカチ山の村娘お黒(若尾文子)が狸御殿のきぬた姫(若尾文子)に瓜二つであることから、人間の男を夫にしたいと狸御殿を出奔してしまったきぬた姫の身代わりとして隣国の若君である狸吉郎(市川雷蔵)と見合いをさせられることになる。狸吉郎はお黒のことがすっかり気に入ってしまい、お黒も身分違いと知りつつも狸吉郎を恋しく想うようになっていく。そんなとき、人間の男に相手にもされなかったのきぬた姫が狸の国へ帰ってくる。娘を若君と結婚させて玉の輿にのせせようとの野心を抱いていたお黒の父親の泥右衛門(菅井一郎)は邪魔なきぬた姫を殺そうとする。それを知ったお黒はきぬた姫の身代わりになって姫を逃がす。それを知らない泥右衛門は娘のお黒をきぬた姫だと思い込み刀で斬り殺そうとする。そして、泥右衛門はお黒に一刀を浴びせてしまう。
【レビュー・感想・ネタバレ】
本作は、木村恵吾原作の「オペレッタ喜劇」の『狸御殿』シリーズの第7作目で、第1作目『狸御殿』のリメイク作品である。私はシリーズ8作目となるリメイク作品である2005年公開の『オペレッタ狸御殿』を見ていたのだが、今回それらが一連の『狸御殿』シリーズなのだということを初めて知った。
『オペレッタ狸御殿』は全然面白くなかったのだけれども、本作の『初春狸御殿』は非常に面白かった。「初春狸御殿」という変なタイトルからして面白くなさそうな映画だろうと思っていたので意外な面白さに面食らった。
歌と踊りとユーモアのあるコメディとまるで舞台のお芝居を観ているような美術と物語の展開にとても楽しく見ることができた。まさにお正月に舞台の歌と踊りとお芝居を観ているかのような錯覚させおぼえた。洋画のミュージカルとは違った日本版ミュージカルに魅せられたと言って良い。非常によく出来た映画である。
私はお黒が泥右衛門の一刀を浴びたとき彼女は死んだのではないか思った。父親に殺されるなんて何て不幸な娘だろいう、この映画はとんでもない悲劇だとも思った。しかし、これまでの能天気な話の筋からすれば、この映画がそのような悲劇で終わらせるのだろうかという疑問も持っていた。そしたら、お黒が片腕を白い布で吊っている姿で登場して来た。私は「ああ、やっぱり死んでいなかった。よかった。」と思えた。薬売りの栗助(勝新太郎)の薬と手当で死んでしまっていたところを助けられたのである。実は、栗助はお黒のことをずっと以前から好きで、お黒も栗助のことを憎からず思っていたのである。このことがきっかけで、この二人の気持ちが通じ合う。
映画は姫と狸吉郎、お黒と栗助の二組の祝言で終わる。
この映画で重要な役柄は泥右衛門であろう。泥右衛門はカチカチ山で兎にしてやられて火傷の古傷を持っていてそれがよく痛む。泥右衛門は傷の手当てに栗助から薬を買っていたのである。その古傷のせいで、泥右衛門は昔のように体が言うことを聞かない。それで、娘に降って湧いた出来事を利用して玉の輿に乗ろうという野心を持ってしまう。泥右衛門という存在がなかったらこの映画の面白さの半分くらいはなくなってしまうだろうと思う。泥右衛門は人間の愚かさの象徴的な存在とも言える。それが愉快なのである。
【キャスト】
狸吉郎(市川雷蔵)
きぬた姫(若尾文子)
お黒(若尾文子)
栗助(勝新太郎)
第一の姫(近藤美恵子)
第二の姫(金田一敦子)
第三の姫(神楽坂浮子)
第四の姫(中村玉緒)
第五の姫(松尾和子)
第六の姫(仁木多鶴子)
第七の姫(藤本二三代)
かえで[腰元](真城千都世)
おはぎ[腰元](二代目水谷八重子)
おかや[腰元](岸正子)
尾花[腰元](美川純子)
おくず[腰元](大和七海路)
桔梗[腰元](小町瑠美子)
狸右衛門[家老](二代目中村鴈治郎)
狸路[老女](楠トシエ)
おぶく[河童](小浜奈々子)
おぴよ[河童](毛利郁子)
泥右衛門(菅井一郎)
狸松[泥右衛門乾分](江戸家猫八)
狸五郎[泥右衛門乾分](三遊亭小金馬)
狸六[奥番](トニー谷)
善六(左卜全)
狸十郎[用人](嵐三右衛門)
【スタッフ】
製作:大映京都撮影所
監督:木村恵吾
原作:木村恵吾
脚本:木村恵吾
企画:山崎昭郎
製作:三浦信夫
美術:上里義三、西岡善信
音楽:吉田正
作詞:佐伯孝夫
録音:大谷巖
照明:岡本健一
撮影:今井ひろし
編集:菅沼完二
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